妖怪と水木しげる

水木しげるが有名になり、一般的になるまでは、妖怪は現実のものと思われなかった。それまでは、たとえ妖怪にどんなに興味があり、妖怪を好きでも、じっさいに妖怪が存在しているとは思われていなかった。

「妖怪は実在する」と、そういったことを公言する人々はいたかもしれない。だとしても、それを殆どの人々は、「ああは言っているが、でも言っている本人も、それを本気で言っているわけではない」ーーと、大半の人々は、そう思っていた。

しかし水木しげるの名前と作品そして多数の妖怪たちが有名になり知名度が飛躍的に高まっていった。結果的に、それが妖怪の実在化となった。著名になり認知度が高まり、それに対して多くの人々が基本的に肯定的な見方や感じ方が中心になると、それは「現実」とされ、その存在は「実在」のものになる。

現実にあるものだから実在する、とは言い切れない。多数の人々が「ない」と思っていたら、いくら「それは本当にある」「じっさいに、いる」と主張したところで、それが信じてもらえなければ、どうにもならない。またそのことを仮に「科学」で証明したとしても、実験で「客観的」に示したとしてもーー多数の大半の人々が、「その実験はインチキだ」、「その公式や理論は覆るかもしれない」、というように、多くの人々が否定的な気持ちであれば、結局は認められないのだ。ーー要するに、多数から承認されて、それが一般的な常識とならないかぎりは、「認知されない」のだ。

妖怪は実在する。それは水木しげるによって、なされた。

妖怪の存在は常識である。だから、妖怪は本当にいる。