自民党とマルクス主義

自民党は最も社会主義的な政党だ」
かなり聞く言葉だ。どこの誰とは特定できないが、メディアや本などで、比較的によく聞くような主張であるような気がする。
その内容をどう考えるかはべつにして、毎年のように国の借金が膨れ上がり、その主要な原因が福祉予算にあると言われる。いつの時代のどこの国と比べればいいのかはともかく、高齢者福祉にせよ、障害者福祉にせよ、それなりのある一定の水準まではきているのかもしれない。
ジェンダーの問題は、毎日のように、なんらかの課題や改革のことが報道をされている。
パワハラ、セクハラ、同調圧力、さまざまな社会的圧力や差別が、それが充分と言えるかはともかく、基本的には「平等化」と「反差別」の方向で進んでいるのだとは思う。
「いじめ」や虐待が相変わらず報道され続けている日常だが、もちろんそれはいけないことであるという前提で、解決せねばならないという姿勢でのことだ。
そして人々の生き方や文化の多様性が言われ、「多様化」が主張され、そこには「共存・共生」が唱えられる。
ーーそれらは自民党社会のもとで為されている現象だ。もちろん政治が全てというわけではない。しかしそれが、自民党の政権のもとでの社会での動きであることはたしかであろう。
おおよそ60年間にのぼる自民党の政権下で、紆余曲折と多くの批判を浴びながら、日本が実質的に「社会主義的」な結果になってきているということもできるかもしれない。しかもアメリカのように二大政党制ではなく、西欧のように社会民主主義政党が政権をとるわけでもなく(わずかに例外はあったが)、事実上の自民党一党支配で、しかも、まがいなりにも「自由」と「民主主義」そして平和を保ちながら、長い目でみれば、福祉の充実化や、少数派や弱者の人権擁護や、それなりの景気対策などで…「社会主義的」な世の中になってきたのかもしれない。
これは結局マルクス主義の影響ではないだろうか。本来は保守的な巨大政党である自民党の、その圧倒的に強力な権力支配は、それが強大で安定しているが故に、事実上「すべて」を自民党だけでやらねばならない。ーー結果として、である。だから現実には、それが自民党と比較すれば小さい存在ではあっても、一定の力をもつ少数派や反対派の主張や要求を受け容れなければ、じっさいの政策をなしていくことができない。自民党にとって資本主義の社会を維持することは当然だが、そのためには、社会主義的な政策もある程度は取り組んでいかねばならない。
自民党マルクス主義ーー真っ向から対立する政党と思想が、結果としては共生することで、その両者は生き延びてきているのだ。