戦争という言葉

なぜ戦争になったとたんに、それまで仲良くしていた国民や民族が、とつぜん憎しみと敵対心のかたまりのようになるのか?僕には判らなかったし、今でも判らない。だが、ーー確信や証拠があるわけではないが、僕は突然こんなことを感じた。ーー戦争という言葉あるいは単語、この「ことば」を聞くことによって、ひとは「敵国」=「敵国人」の感情が生まれるのではないかとーーそうとでも考えてみないことには、どうにも意味不明なのだ。
理屈や理由は解らない。解らないが、そう思った。戦争とは、とうぜんながら「敵」があって成り立つ。敵があるから戦争になるのだ。しかし、僕はそれにたいして疑問が生まれた。
敵がいるから戦争になるのではない。
戦争によって敵が生まれるのだ、と。
ーー戦争が敵をつくるのだ。敵がいるから戦争になるのではない。
だから戦争をしてはいけないのだ。敵をつくってはいけないのだ。戦争指導者とは、敵をつくりたい人々だ。敵を求める人々だ。ほんとうは敵などいないのに、人々に敵を意識させるために、そのために戦争をするのだ。
敵がいるから戦争になるのではない。戦争によって、味方や仲間だった人々が「敵」になってしまうのだ。