ポピュリズムの良識性

参院選自民党とその補完的な政党を含めて圧勝したことは、ある程度は予測できたことであり、その意味では予想通りの結果だったと言える。
とくにロシアのウクライナ侵攻により国防意識が高まったことを前提に、加えて安倍元首相が殺害されたことによる同情票なども含めて、通常のポピュリズム的な感覚から考えて普通の結果かと違う。
同時に、改憲提示の議席数を確保したことは最重要の課題になるであろう。ただ、自民党と協力関係にある公明党の存在は、与党勢力であることによって、むしろ改憲発議や改憲の具体的な内容などに困難な状況をつくっているともいえる。
またこれは私の勝手な感覚で客観的な根拠があるわけではないがーー自民党は意外に改憲の実行的な行動に関しては慎重な態度になりそうな気がする。国際関係が緊迫して隣国に対する脅威感が高まると、メディアや保守的なタカ派勢力の政治家や評論家などの影響もあり、国民の多数が一時的に防衛力の増強や改憲を求めることは多い、すくなくとも珍しいことではないと思う。しかしだからといって、それが必ずしも改憲の実行化ということにつながるとは思わない。
改憲議席数が確保され、しかも国民の多数が改憲を支持しているとしよう。物理的・技術的には改憲の可能性が高まったことになる。それならば自民党は一丸となって積極的に改憲をしようとなるかといえば、それは違うと思う。自民党の党是として改憲があるが、それが現実化しようとすると、それに不安や躊躇の気持ちに転換すると思う。かなりの自民党議員は、防衛力の増強は求めても、本気で改憲をしたいとは思わないだろう。防衛力の増強も、そもそも自衛隊の存在そのものも、現行憲法があるからこそ可能なのだと思う。憲法が防衛力増強の歯止めになっていることを判っているからこそ「安心して」さまざまの防衛問題のことに関わることも可能なのだろうと思う。憲法が必然的に軍事関係の無制限な拡大・暴走を抑制している、それが暗黙の了解のような状態なのではないかと思う。それは、実際に改憲をすることが可能な人間や組織、権限をもっているからこそ、そのことにたいしての慎重さも大きいと思われる。
もちろん今回の参院選の結果は、改憲の現実性を強めたことはたしかだ。ただ、自民党にしても、じっさいの改憲が可能性を大きくもったことで、かえって改憲に慎重になるかもしれないということも充分に考えられる。