ねぇねぇ仲村(7)

私がね、仲村さん…そう仲村叶っていう人間に惚れ込んだ最大の理由は、あなたがオタクで、ほかの一般的な常識や社会生活がきちんとしているから。私にはオタクということは、正直、いまだにハッキリと解らないことが多いと思う。
でも言えるのは、たとえばオタクと言われる人たちが、趣味的なことに継続して熱中するらしいこと。叶の場合はそれはそれで、その好きなものが特撮だということ。そしてさらに叶は若い女性で普通の会社員ということもあってだろうけど、自分が特撮オタクであることを周囲に隠していること。あとこれが大きいと思うけど、お母さんが特撮嫌いで、とくに仲村さんは女性ということもあって、仲村さんの特撮に対して強く反対だということ。
これらのことを、ひとつずつ考えてきちんと何かを述べることは僕にはできない。正直、わからないことが多いし自分がいい加減に言えることでもないと思います。
ただ解るのは、最初にも言ったように、あなたが一般社会生活というか、たとえばーーきちんと仕事していて、職場の同僚たちから評判がいい。馴れ合いや慣習で残業をしなければならないという時に、それが自分が早く帰りたいという理由からでも、ただ理不尽に会社が残業を強いたり、それにみなも納得できずに従っていいわけではない、ということを説得力をもって説明し主張できること。
同僚の北代さんに誤解されたとき、自分と相手との関わりを大事にし、大変で面倒でも、きちんと誤解を解き、同時に自分が思うことは主張したこと。
仲村さんは昼食に手弁当で、同僚たちから「私たちなんか外食かコンビニだものね」「料理うまいと彼氏喜ぶでしょう?」と言われ、心の中で「本当は節約して特撮のDVD買いたいがためなのに」と思ったこと。仲村さんとしては複雑な気持ちがあったと思う。立場や環境や経験が大きく違い、まして特撮オタクではなく、また男の僕には解らないことが多い。それでも、自分の本当に好きなことのために、節約するためにお弁当を毎日作ってくるのは偉いと、すくなくとも僕は思う。これが、たとえば特撮のDVDを買うために借金をしてまで、ということであったら、ーーたしかに生き方はその人のものだけれど、僕自身はあまりそれに賛成はできない。もちろん、いろいろな事情や状況があり、一概に決めつけることはできない。ただ、基本的には、生活が不安になることは、よほどのことがないかぎり、避けたほうがいいと僕は思う。借金・ローンというもので、いつも不安がつきまとい、場合によって返済に追われることになり、最悪の場合は生活の根本が崩れてしまう。それでは肝心な特撮を楽しむという本来の目的そのものさえ出来なくなってしまう。もちろん人生そのものさえ破壊しかねない。ーー仲村さんは、そうではない。特撮を本当に愛するからこそ、それを本当に楽しむために何が必要かを知っている。そのためには、ある程度の我慢もして、多少の面倒があったとしても、昼食を手作り弁当にする。ーー僕は、そういうの凄いと思う。人によっては「たったそれだけ」と言うかもしれない。でも、たったそれだけのことが、できない人が大勢いると思う。自分にとって真に大切なものを知っていて、その大切なことのためには、生活の基盤や人間関係の基本や、仕事の責任や、そういった生きる基礎をきちんと成し遂げていく。ーーかんたんなようで、なかなかできることではないと思う。そういう仲村さんを僕は尊敬した。
定番だけど例のNHKの番組コマーシャルのナレーション…いいと思う。ナレーションのように、突き進んでいってほしい。
「行け!特撮OLオタク、仲村叶!」
仲村さん、まぶしい。