ねぇねぇ仲村(6)

仲村さんが吉田さんにたいして遠慮、それから「置いて行かれた感」を感じたのは、吉田さんが写真の学校に通うことにしたということを聞いたときからですね。…わかる気がする。それまで仲村さんと吉田さんは「特撮」ということでつながっていた。それが吉田さんが特撮以外のことで力を入れようとしている。それはそれで、やりがいのあることに打ち込もうとしている。応援しようという気持ちも嘘ではない。でもそれはそれで、やっぱり吉田さんが自分から離れていってしまうような気がしてしまう。こういうことは理屈だけでなく、どうにもならない気持ちのことだと思うから。
その次に、そういう吉田さんにたいしての割り切れない気持ちで、お正月映画に吉田さんを誘うために電話しましたよね。あの時に、明けて正月三日の日に「その日あいてますか?」と聞いて、それに吉田さんが「予定入ってます」という答えが返ってきました。「学校ですか?」という仲村さんの問いに吉田さんは「学校ではないんですが…その日何か?」という吉田さんの答えと逆にそれにたいする吉田さんの問いにたいして「いえ、久しぶりに逢いたいなあって」と。仲村さんあの時、映画のこと言わなかった。
映画のことを言わなかったのは、べつにいいと思う。もちろん言ってもよかったと思うし。…それじたいは、どちらでもいいと思います。ただあの時に映画のことを言わなかったのは、吉田さんが写真の学校に通うということを聞いたからだと思う。吉田さんが「学校ですか?」というあなたの問いに「学校ではない」という答えが返ってきたのだから、とにかく学校のことじゃないのは解ったわけですよね。でもそれ以上あれこれ聞いたら、しつこいと思ったのでしょう。そして「じつは映画に誘うつもりだった」ということを言えなかったのは、詳しい事情は解らないが、その日何か予定があるのは確かなのだろうから、映画のことを言えば吉田さんもそれを断るのに気を使うだろうと、そう思ったからでしょう。それは普通の気遣いだろうし、べつにそれはいいと思うんですよ。
でもこれが仮に写真の学校のことを聞いていなかったとしたら…仲村さんは吉田さんに映画のことをわりとふつうに話したかもしれない、とも思うんですね。それはじっさいにそうでなければ解らないことですが、たぶんね。吉田さんの学校のことを邪魔してはいけないという気持ちと、取り残されたような自分に対する「みじめさ」のような感情。そういった割り切れない気持ちがあったと思う。
リア充、ていうのね、吉田さんみたいなのを。悔しいけど認めざる得ない。でもそれはそれで、私は仲村さんの生き方でいいと思う。仲村さんがリア充めざすのもいいけど、私は今のままでも吉田さんに負けず幸せになれるんじゃないかと思える。仲村さんがリア充になるとしても、それを意識的にめざすんじゃなくて、結果としてそうなっていくと思う。せっかくここまで頑張ってきたんだもの。マイペースでやっていってほしい。ひとつずつ仲村さんのペースとやり方とで、満足感を増やしていってほしい。