企業と向き合う

いまの世界は、理念としての自由と人権、実態経済と人々の生活を動かしそれを左右するものとしての資本主義…これらが巨大なエネルギーとして動いている。
人権には暴力や差別を否定する概念はもとより、貧困や格差是正などを含めての広範な「みなが幸福になるための必要なものごと」がある。つまり人権は福祉や社会保障、「富の再分配」など、資本主義に対する抑制や是正などのことも含まれる。
自由は、身体や精神を含めて、人間の抑圧や束縛からの解放があることはもちろんだ。しかしそれとともに、自由のなかには、経済的な自由つまり資本主義の自由も含まれる。ただそれは、時代や社会変化で、資本と人権のせめぎあいをも派生させる。
そして人権と自由と二大「理念」のなかで、資本主義が経済を原動力に人々の生活や文化、社会を大きく動かしている。
そうなると、露骨な暴力や人権無視の言動などをべつにすると、あきらかに今の世で否定されるのは、強権による政治だろう。国内における、明らかな差別や抑圧、他国に対する侵略や戦争など。これらの強権政治は、現実に存在するものだが、しかし本来的には、「望ましくないもの」とされているのが現在の世界の認識である。
ということは、じっさいのところ、最も人々が生活や社会で大きく影響を受けると感じるのは資本主義、具体的には企業、あるいは企業の在り方ということになる。企業がどのようなありようであるか、その性質や活動がどのようであるかが大きく関わってくる。
公害や有害な商品に関係していないか。行政との癒着はないか。脱税。独占。消費者との関わり。従業員や経営体質。ーー人々が企業とどう関わり、企業に何を求めるのか、また反対に何を求めないのか、…そういう、人々と企業の在り方が世の中の全体の、そして具体的な「みなの生活」に関わっていくことになる。企業の社会的な貢献と本来、企業の目的である利潤・利益の追求という確執。企業の在り方に人々が目を向けていくがとても重要だということになる。個人としての人々も、公的な役割を担うべき国家や行政も、企業がどうあるべきかを重視することが、それをみなが考えていくことが、大切になっていく。