特撮偏見ダイアリー(4)

こんなに特撮のことを考えたのは初めてだ。幼児期の頃は「七色仮面」や「ナショナル・キッド」など、いまのように技術は発達していなかったかもしれないが、テレビ特撮の黎明期の作品を夢中で観ていた。怪人もロボットもヒーローも、現実と物語の区別はつかずに観ていたのだと思う。曖昧なんだったと思う。なぜ面白いと思ったか?それは今も理屈ではわからない。べつに解らなくてもいいのだと思う。面白かったのだし、夢中だったことは事実だったのだから。
その頃は幼くて「かっこいい」という言葉や表現さえ知らなかったが、もし知っていたらたぶん「かっこいい!」と叫んでいたと思う。
あの当時は、今ほど特撮もSF的ではなかった。ロボットとか怪獣とかを、もっと見たかったが、それらの出番や回数もすくなく、申し訳程度だったと思う。ヒーローも空を飛ぶのは「ナショナル・キッド」を除けばいくらもいなかったと思う。しかしそれでも楽しかった。
特撮でもとくに、少しでもSF感が強いものが好きだったが、しかしそのこととはべつに、個別でいちばんーさっきも書いたように、当時は「かっこいい」という言葉さえ知らなかったと思うが、もし仮にその頃に「かっこいい」という言葉や表現を知っていたら、まず間違いなく、ーいや、たぶん絶対に、「かっこいい」と言っていたであろう作品は、あるいはヒーローは、SFではなく時代劇の「白鳥の騎士」だった。
時代劇でも現代劇でもSFでも、あらゆるジャンルのなかで、しかも特撮とかヒーローものとかをこえて、現在の諸々の作品も海外の作品も、テレビや映画など映像だけでなく、小説などの活字も、漫画も、もちろんアニメもーなにもかも、いっさいを含めて、いわゆる「かっこいい」と思うのは「白鳥の騎士」だけだ。ほかにも、かっこいいといえるものはあるが、それは「比べれば、かっこいい」という比較の問題であって絶対の存在ではない。極端な言い方をすれば「これこそが、かっこいい」と言い切れるものは「白鳥の騎士」だけと言っていい。ー要するに、それほど「白鳥の騎士」は、かっこいいのだ。すくなくとも僕にとってはそうなのだ。
「白鳥の騎士」は、ソフト化はされていない。元のフィルムもないと聞いている。みんな消失してしまったのかもしれない。残念なことだが、しかしそれは言ってもしかたがない。とにかく僕は「白鳥の騎士」をかっこいいと思っているし、それは当時も今も同じだ。だからそれでいい。