公家物語(7)

公家が夢中になっているのは「トクサツガガガ」というドラマだ。こういう場合なにか仮名を使うほうがいいのか、公家にはよく解らない。これがドラマを真似た小説や漫画などを創作するのなら著作権とかが関係するかもしれない。だがここではそのドラマの感想を述べるだけだから、かまわないと思う。
2019年にNHKで放送されたテレビ・ドラマだ。公家はそのドラマの主人公である仲村叶(なかむら・かの)に夢中なのだ。特撮…この文字通りに特別な芸術が題材にされている。じっさい、第1話で「特撮…それは、特殊な撮影技術によって作られた映像作品」という説明がナレーションで言われている。(2019年1月18日放送)。
公家も7歳くらいまでは、特撮番組に夢中だったのだ。とくに「ミュータント公家」は、いちばん好きな作品だった。似たタイトルに「ミュータント・サブ」という石ノ森章太郎の漫画があったが、もちろんそれとは関係ない。だが、ミュータントというのだから、超能力ものであることは確かだった。小豆(あずき)の精霊が宿った公家が、小豆の能力を使って悪の組織をやっつけるというものだ。目から下を覆面で隠した公家束帯のヒーローなのだが、変身すると顔全体が小豆になる。すると能力も何倍にも強くなるというものだった。
しかし8歳くらいから後、公家はいつの間にかそういった特撮ヒーローものから離れていった。だから、トクサツガガガの仲村叶が、成人になっても特撮に夢中な姿を見て、そこに懐かしさと不思議さと同時に、尊敬と憧れの念を感じないではいられなかった。