特撮偏見ダイアリー(3)

自分の幼なじみの女性は、僕より2歳上だが、当時の特撮ヒーロー番組を、それなりに観ていたようだ。ただその中でも、彼女が特に好きな番組は「少年探偵団」と「少年ジェット」だったようで、そこは僕とは違う。いま考えると、理由はいろいろあるかもしれないが、想像だが「少年探偵団」も「少年ジェット」も、ジェットも少年探偵団の団員も「素顔」で登場し、素顔のまま活躍したということだ。これは彼女とそのことに関して、きちんと突き詰めて話したわけではない。だからもちろん断言などできない。ただ、想像の範囲を超えないが、そこに性差による嗜好の違いはないだろうか?ということだ。結論からいえば「わからない」すくなくともハッキリ言うことは出来ない。ただ、おぼろげな記憶だが、彼女から、そういう特撮ものヒーローもの等の感想を聞いて、いずれも、うっすらと断片的にしか憶えていないが、そのほとんどは、そこに登場する少年たちに関することであったような気がする。すくなくとも怪人とか仮面とか、空を飛ぶとか飛ばないとか、そういったことを彼女から聞いた記憶はないと思う。それは自分が聞いていても忘れただけかもしれないが、とにかくその憶えはない。ロボットのことなども、たとえばーこれは実写版より、どちらかといえばアニメ版のほうについてだったかもしれないがー彼女は鉄人28号よりも鉄腕アトムのほうが好きだったと思う。鉄人28号のことを話す場合も、ロボットの鉄人よりも、鉄人を操縦する正太郎少年のことを話すことが多かった気がする。
仲村叶は、どうか?叶から僕の世代の特撮の話は出ない。それは当然だろうし、そのことはいい。ただ、吉田さんに言っている「私たちからしたら変身やロボ戦こそ見所だけど」というところ…そこに時代の差や戦隊ヒーローものを見慣れた人々との違いがあるのは当然だが、それでも僕はやはり、「女性が変身やロボ戦」を好きなことに、とても不思議な感覚をもつ。
「ほんとうに、そういう女性がいるんだあ?!」これがいちばんの感想だ。
叶は架空の「つくられた人物」ではないか?ーしかし自分にとっては実感としては「架空」ではない。理屈や認識では物語の登場人物であることは知っている。しかし、ここは原作の漫画のほうは読んでいないので、そちらのことはべつにして、あくまでもドラマの叶を考える。叶を見て、「ほんとうに、こういう女性がいる」ということを知った。叶が好きなエマージェイソンも、シシレオーも、またDVDのジャケットや雑誌の写真だけで見るかぎりでは「ストレンジャーV(ファイブ)」も、いわゆるロボットらしいロボットであり、それは、すくなくとも外見上は、ヒューマノイドではない。シシレオーたちジュウショウワンのヒーローたちも、宇宙飛行士のヘルメットのようなものを頭からすっぽり被り、濃いフードによって素顔は見えない。ー叶は、ロボットや変身後のヒーローを好きなのだ。変身しないときの素顔の人間のヒーローも好きだが、とにかく変身後のヒーローは好きだ。変身しないときのヒーロー役に似ている人にオープニングで大空に吼えるポーズをしてもらったあと叶は心の中で「あとは変身してくれたら完璧なんだけど」と言う。
叶を見たとき、叶の気持ちや言動を知ったとき、「この人は、ほんとうに特撮が好きなんだなあ」と思った。ロボットや変身や、怪人や怪獣や…そういうのが、ほんとうに、こんなに好きな女性がいるのだと思った。こんな新鮮な気持ちになったのは、おそらく生まれて初めてだと思う。ショックだった。ただ、そのショックによって、僕は叶を素敵だと思った。