集団と暴力性

集団とくに閉鎖的な場所での規則・管理・権威・暴力・支配といったことについて、心理学的な実験や研究のことはよく聞く。

いわゆるロールプレイとか模擬実験とかーーとくにそれは、ホロコーストなどに代表されるような、抑圧や暴力や権威主義的なことによって、人間がどのように変化をするのかといったことだ。

そういった研究において、具体的に人間を使っての実験が人道上、倫理的にどう考えられるかは、ひとまず置くとする。

まず世界の心理学者をはじめ、そういったことを考えるためであれば、日本の戦前の旧軍隊の、軍隊生活を調べるのがいちばんいいと思う。

兵士たちに対する「いじめ」「しごき」「私的制裁」といった名前で呼ばれるものは、世界でも類を見ないようなひどいものであったと思う。

日本は太平洋戦争で、特攻や玉砕が為されたが、それは他の国ではまず有り得ないことだったと思う。そのような命令に従うことは、よほど例外的なことであり、世界史規模でみても極めてまれだ。

日本の旧・帝国陸海軍の兵士に対する軍隊教育=いじめ・私的制裁が、それを可能にした。それにより旧・日本の兵士たちは「理不尽な命令に従う」ようになった。

日本の旧軍は、「私的制裁」という方法によって、「りくつ」が通用しないことを兵士たちに教えた。それは教えるというより、心身ともに染みこませた。その内容や合理性の有無を問わず、命じられたことに自動的に身体が動くようにさせる。いかに「理不尽な命令にしたがうか」が重要とされた。だから軍隊では、徹底して、理不尽に慣れるようにした。

兵士たちに、理不尽さを植え付けることが日本軍の最大の目的だった。