ねぇねぇ仲村(4)

ーー「欲しい!」ーー
あれは可笑しかったなァ…悪いけど、今でもあの場面のあの独白を思い出すと、笑っちゃう。シシレオーのフィギア…
「欲しいんか?!」…って…
そのあとすぐ思った。「あんなもんが?!」って。ごめん!欲しいよね、叶にとっては。…そうだよなァ
でもまだその頃は叶のこと、よく解ってなくて。もちろんその前に、あんな苦労してシシレオーのスイング手に入れたことは知ってましたよ…知っていたけどさ…それでもまだあの頃は、そうは思っても、ついね、
悪いけどそのあとさらに「あのさ、これ、ほんとに欲しい???」って、…… ハハハっ~やっぱ思っちゃったのね。若い女性がさ、たとえばショーウインドウのガラス越しに、マネキンが着ているコートを見つめて、とかね。それともデパートの宝石売場で、トルソーの頸に掛かった高価なペンダントを見てとか。それで「欲しい」、だったら、とくに不思議とは思わない。それが、特撮ヒーローのフィギア……いや、……いいんですよ。その人にとっては、大切なものは、一般的なものでないことは当然あるし、また金銭的な価値とはべつなことだ。それはそうだろう。そういうことは判ってはいたつもりだったがーーやっぱり、つい単純に、若いOLが特撮のフィギア見つめて、突然「欲しい」っていう声きいたとき、「ほ…ほしいんか?…ほんとに?」ってーーそう感じて驚いてしまったのね。
それで、ほら、あの時のあなたの声、言い方ね、こう地の底からうねるような感じで、ちょっと恐いような、ホラー映画みたいな感じで、まるで押し殺したような感じで、いきなりね、「ほし~イ」って…
でも…それで私は、あなたのこと好きになった。どうしようもないような、この言いようのない感覚。そのギャップ、そのあなたに惚れたの、私は。
惚れたから、べつにどうのこうのじゃない。とにかく好きになったの。
こんな素敵なひと、ほかにいない。そう思った。
ーーほしいッ!…すごい。すごいな。
お子様メニューのどんどんセットか、なるほどなア…んんーーん。まいったね。うん、まいった。
好きになった。
行け!特撮OLオタク、仲村叶!
あのNHKの宣伝のナレーションそのものだ。かっこいいなア…
仲村叶、すごいや。
「欲しい!」ーー恥ずかしい…
いや、恥ずかしく…ない!…のだ。
行け!仲村!