生命の悲劇

宇宙の最大の不幸は、生命を生み出したこと。生命というものによって、初めて物質に「主体」というものが生まれた。それまでは平和だった。
生命の不幸は、人間を生み出したこと。人間は、個人と集団に分かれてしまったから。必然的に社会を生み出した。比較的、文明の初期段階の頃から、世の中は「社会主義的な社会」と「自由な個人およびその集合体」とに分離してきていたのだ。
本能だけであったら、人間に欲望は生まれなかっただろう。言語と思考と愛ーーによって、欲望は生まれた。
人類は、利己主義的な人間と利他主義的な人間とに、両極の突出した少数の人々と、その極端にどちらでもない中間的な「ふつうの人々」とに分かれた。しかし人間はけっきょくは「多様性」を認め合うという、いちばん無難な方向に落ち着こうとしているのではないかと思う。滅びる時もあるかもしれないが、それはいま考えても仕方ない。