公家物語(3)

公家なんかつまらん。いつの時代だって同じだ。千年の時を超えてこの時代にやって来たーなどという決まり文句も言いたくない。それは判っていて、この時代に来てしまった。この時代なら上手くいくだろうと思って来たわけではない。じゃあなんで来たんだと、まあ便利な社会ならいくらかは生きやすいかもしれないと安直な気持ちだった。じゃあ仕方ないか…と、それも知ってたくせに。どこまでいったって、自分の考えることなどタカが知れている。ーふん、と公家はワザと言った。自嘲と言うことさえ恥ずかしくなるような、空虚感を絵にかいたような気持ちだった。
公家は、小さな商店街の小綺麗な通路を傍らに見ながら薄い宵闇の大通りに出た。