公家物語(2)

公家が21世紀の現代に現れるなどという話は、いくらでもあるだろう。小説、ドラマや映画、漫画にアニメ、演劇…あとよく解らないが、おそらくゲームとかでも。今の世の中、何があっても驚かないし、ちっとも珍しいことではない。だからこの公家も平凡に東京の郊外に居住しているが、誰も不思議がる者はいない。もちろんマスコミが騒ぐなどということも、まったくない。公家程度で世間が注目する物語など、1970年代か、せいぜい80年代くらいまでではないだろうか。
察するに、そういう現象は、ネットが発達した影響が最も大きいと思う。もちろんスマホの時代になり、その傾向は加速度がついたこと言うまでもない。公家も身近な存在になったということである。
公家はチェーン店のカフェに視線をやって、しかし店には入らずそのまま通り過ぎた。ちょっとだけ珈琲とモンブランに気持ちが動いたが、糖質も気になったしコロナのことも多少は考えた。カネもなかった。