懐かしさは解凍された冷凍食品

冷凍食品を解凍すると必ず失われた味を探してみ自分がいることを感じる。どんなに巧みに工夫を凝らしたものであっても、やはり人工物であるから仕方がないであろし、またそんな先入観もあるかもしれない。思い出やノスタルジーは、反対に美化された装飾品なのかもしれない。それはたぶん、自然という体験が、忘却という濾過装置を通過するうちに、都合良いいように廃棄されたり、また余計なものが添加されたりして、結果的には最も都合のよい化合物となって現れてくるのと似ているかもしれない。懐かしさは、ひび割れた舗装道路から溶け出したコールタールが突然にバニラクリームを挟んだウエハースに成ったようなものだ。それはまるで片方の目で工事中のビルから落下する鉄骨を見、もう片方の目で空に舞い上がる巨大なウエハース菓子を観るのに似ている。