妄想妄言(1)

公家は地面にうつ伏せになると、そのままズズズーと進んだ。それは地上を這うロケット並みのスピードだった。そんなに速いのに公家は、電柱も自動車もクキっクキっと曲がりくねって巧みにかわしていった。
「銀英伝」と略称で呼ばれることが多い「銀河英雄伝説」はーお公家さんとしてはアニメのほうが好きだがーしかしもちろん原作の小説も素晴らしい。ーその銀英伝ヤン・ウェンリーのような人物が軍人になるべきだ。軍や軍人の存在そのものを否定してしまえばそれ以上話は進まない。それを理想とすることを前提にしたとして、現実に軍人はヤンのような在り方をめざす必要があるのだ。答は簡単だ。ヤンは軍の危険性を誰より知っているからだ。
ヒョーイっ!奇妙な声を発して公家はモンブランのスポンジ部分の中を突き進んだ。
政治屋と事務屋がいれば公的機関は運営できる。あとは現場の人間がそれぞれの役割を果たしていけばよい。政治屋に鋭さや才知を求めないほうがいい。ノッペンふにゃりとしているほうがよいのだ。
公家はワイン工場の酒樽の中に放尿しながら言った。「ざまあクソづけタクアンぼりぼり」。そして市販の雑穀ミックスを玄米に混ぜて言った。「ざまあクソづけクソばばあ!」。冬の日差しを浴びながら公家は眠った。