冷戦後に

冷戦が終わったのがいつかという正確なことを僕は知らない。象徴的な出来事としてはベルリンの壁崩壊だろうし、東側の大国が消滅したということではソ連崩壊だろう。どちらにしても、1992年からは「冷戦後」と呼んで、まず間違いではないだろう。
冷戦後の数年間は、わりと順当に時代は進んでいった気がする。変化を大きく感じたのはやはり今世紀になってからだ。いちばん実感したのは、やはりコンピュータの飛躍的な発達だろう。とくにスマホが普及してからは、根本的に世界が変わった。総メディア化とでも呼ぶべきか。小さな画面の中に、文字と画像で、人々は世界中とつながるようになった。それも一方的にではなく双方向に、無数の人間と。人々は第二の人格をもつようになった。
グローバル化は、多様性の文化と社会をもたらした。もはや事実上、壁と制約というものは、世の中から消えようとしている。
以前、不確実性という言葉が流行ったことがあったが、不確実性はますます広がり、それと同時に、すべての可能性が半ば現実感をもって受け容れられてきている。すべてのものごとは、現実の可能性が充分にあることとして認識をされてきている。
価値観は消えたとみてよい。すべての価値が認められたからだ。