自衛隊は軍隊ではない

「戦力なき軍隊」という矛盾した表現はかなり有名だと思う。いったい「戦力5い軍隊」などという者があり得るだろうか?戦力があってはじめて軍隊というのだろう。…これはきわめて常識的な感想だ。
最初これは政治家の苦しまぎれの言い訳だと受け取られた。それが普通だろう。それが普通だが、しかし時の経過と共に、この表現はまんざら一時しのぎのたんなる言い逃れや詭弁だけではなく、あるていどの説得性をもつようになってきた。「瓢箪から駒」「嘘から出た実(まこと)」ではないが、ものごとは、時と経験によって、ほんとうに変化をしていくものなのだと思った。自衛隊は戦力であってはならない。だがその実態からは普通に考えて戦力だろう。戦力をもうすこし具体的なイメージにすると、いわゆる軍隊だろう。しかし戦力とともに軍隊も憲法上は持つことができない。
「戦力なき軍隊」が言葉上の矛盾を含んでいることはもちろんだが、軍隊も保有してはいけない。となると、どちらにしても、戦力も軍隊もだめなのだ。
ーー問題は要するに武力行使だろうが武力行使は殺傷や破壊をもたらすことだと思う。それを絶対に禁止するとなると、じっさいの社会や生活をなすためにそれは不可能でないか…とても難しい問題だが、ーーそのときに使われるのが言葉の活用なのだと思う。それは言葉による誤魔化しと受け取られる場合もあるし、じっさいに誤魔化しであることも多い。しかしそれをいうのであれば、社会はそもそも誤魔化しではないだろうか。
自衛隊は軍隊であってはならない。もちろん戦力であってもいけない。それらのことだけは、たしかなことであると思う。