公家物語(10)

公家は野菜ジュースを飲んでいた。今の世のほうが野菜の絶対的な種類はたぶん多いと思うが、知ってのように環境的には野菜不足になりがちだ。といはっても公家のいた時代が栄養バランス的に良かったかどうかは解らない。とくに上流階級の者は、栄養バランスの問題に加えて運動不足などもあったかと思う。公家は上流階級と言えたかどうかはともかく、いちおう「公家」だから、やはりそれは庶民階級ではない。ただ現代がこれほど健康ブームになっていることは予測しなかった。
ーふふん!…公家はジュースを飲み終えると鼻先で笑った。とくになにか理由があったわけではない。そうしたかったからだ。
野菜…か。人参、牛蒡、筍、椎茸、それで煮物を作る。べつにホウレンソウのお浸しとカボチャの煮物も作る。あとはシチューだ。ジャガイモ、玉葱、ブロッコリー、シメジ…人参は煮物用の余ったので足りる。動物性のものはスーパーのシーフードミックスでいい。味付けは市販のクリームシチューの元。
ふふん!…再び公家は鼻で笑うと手提げ袋を手にしてスーパーに向かった。